日々の泡

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【映画】『スウィート17モンスター』感想

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◼評価
 ★★★⭐⭐(3.9/5.0)

◼感想
 主人公の女子高生ネイディーンは、幼少期を振り返って「この世の中には『勝ち組』と『負け組』の二種類の人間がいて、私はいつも『負け組』だ」と語る。
 そんな彼女を見て、観客である私は、こんな風に自分の十代を振り返る。
 「世の中の大人には、高校時代を振り返った時に『楽しかったあの頃に戻りたい!』という大人と、『あんな悲惨な時代には戻りたくない!』という大人の二種類がいて、私は後者のタイプだ」……と。
 そしてこの映画は、悩める十代のみならず、私のような、かつて不遇の十代を過ごした大人達に向けた映画でもある。
 だから、この映画を観て、全く主人公に共感できなくて面白くないと思った人は、皮肉ではなく、ある意味でとても幸せな人なのだと思う。

 映画は、昼休みの喧騒の中、17歳の高校生ネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)が、担任教師ブルーナーが一人でランチしているクラスルームに飛び込んで来るところから始まる。ネイディーンは、ブルーナーに突然「今から自殺する!大きな車を狙って飛び出してやる!」と早口でまくしたてだす。そして、ブルーナーと観客は呆然と思う。『いったい、この女の子は何にそんな追い詰められているのだ……?』と。
 すると、そんな疑問に応えるかのように、映画は彼女の幼少期から現在に至るまでの人生を回想し始める。
 自称「負け組」のネイディーンは、小学生の頃からイジメに遭っていた。そんな孤独な幼少期に出会い、現在まで唯一の親友であるクリスタが、彼女の心の拠り所だった。母親の居ない週末に泥酔し「こんなミジメな私なんて大嫌い!」と愚痴とゲロを吐くネイディーンを、優しく懐抱してくれるクリスタ。
 だがそんなクリスタが、ネイディーンの嫌悪する「生まれついての勝ち組」である兄のダリアンと恋に落ちてしまう。これにより、ネイディーンとクリスタの友情にヒビが入り、彼女は唯一の親友を失うという、絶望的な疎外感に襲われる。
 そして、そこから自暴自棄になった彼女の奇行が始まる……。

 ネイディーンは、他人からすれば、どう見ても嫌な女の子である。自分の事を(実際そんなことないのに)ブスだと思いこんでるし、そのくせ他人をいつも小馬鹿にして蔑んでいる。好きな男の子がいても、遠目に妄想のネタにはするけど、実際目の前にすれば会話すら続かない。
 そんなアイタタな女の子だが、私はネイディーンに激しい共感を抱くとともに、かつての自分の恥部をさらけ出されてるような、強烈ないたたまれなさを感じた。

 映画の中で彼女のやることなすことは、かつての十代の少年少女たちの、ヤっちまった感満載の、面倒くさいエピソードの集大成のようである。
 友達の彼氏がどうしても好きになれず友情を壊してしまう。しゃべり方が早口で一方的すぎて、他人となかなか仲良くなれない。まだ大して親しくもなってない好きな人に、勢いで独りよがりなメールを送ってしまう。人を褒めるのが下手くそすぎて、相手を逆に怒らせてしまう……等々。

 ネイディーンは常に自分に苛立っている。それは、どんどん肥大していく自意識と、実際の自分との間にギャップがありすぎて、どうして良いか分からず、苦しいからだ。
 観る人によっては「まだ十代なのに、なんでそんなに将来に悲観的なの?」と思うかもしれない。
 だけど、彼女の苦しみは十代だからこそ。理想とは遠くかけ離れた、どうしても好きになれない面倒な自分を抱えて、この先何十年も生きていかなければならないなんて。このまま誰にも受け入れて貰えず、一生独りで生きていかなければいけないなんて。
 人生の先が長いからこそ、ネイディーンの絶望は深いのだ。

 映画の後半、ある人がネイディーンに「すべては時間が解決してくれる」と慰めてくれる。
 その言葉の意味を、その場で彼女は理解できなかっただろうと思う。けれど、もし私がその場にいても、きっと似たような言葉をかけたはずだ。
 たとえ自分が好きになれなくても、どんなに自分が面倒くさくても、失敗しながら、人はそんな自分と折り合いをつける術を学んでいく。今ネイディーンが苦しいのは、その過程でもがいているから。そして実際、もがき苦しんでいるのはあなただけじゃないのだ……。
 そして映画のラストで、ネイディーンは自分の視野の狭さに気づき、行動し始める。だから、彼女はきっと生き抜いていけるだろう。

 2017年のいま、もし悩める十代の人がいて、この映画に出会う事ができたのなら、その人はラッキーだと思う。
 振り返ってみると、そういえば私が十代の頃には『ゴーストワールド』という素晴らしい映画との出会いがあった。
 自分と上手く付き合えない、未来の十代の為に、これからも『スウィート17モンスター』や『ゴーストワールド』のような青春映画が、数年おきに世の中に生まれてほしい。かつて17歳の女の子だった私は、そう願っている。

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