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日々の泡

ついったでは書ききれない感想など

「幕末Rock 超超絶頂★雷舞」が描いた徳川慶喜少年の魂の孤独と救済【雷舞レポ】

幕末Rock

 2016年2月28日、半年間待ちに待った超超絶頂☆雷舞に、ついに行ってきました。昼の部も夜の部も本当に本当に最高で、昨日からまだずっとフワフワしているような状態です。

break-out.jp


 どの曲も色々と思う事はあり、全部書いていたら書ききれないのですが、特に「宙ノ翼」と「絶頂SPIRAL」に関しては、帰ってからまた聴いてずっと号泣している始末なので、ここで吐き出させて頂きます。


 雷舞の徳川慶喜(CV:斎賀みつき)の尊さは、一体どこから来るのだろうと、昨日からずっと考えていました。
 初めて「宙ノ翼」を聴いた時、切なさが胸に込み上げてきたのを覚えています。
 強大な力を持って生まれたが故に、生まれながらの孤独を背負う運命になった徳川幕府十五代目将軍・徳川慶喜少年と、彼に寄り添う大老井伊直弼―…二人の関係には胸に迫るものがあり、それがこの歌詞に見事に表されていると感じました。
 しかし、歌詞の中で示されているように、苦悩する慶喜の問いに、直弼が直接的な形で答える事はありません。それは、慶喜という少年の孤独、運命を救えるのは、直弼ではないからであり、また結果的に慶喜を孤独に追いやった原因が直弼にあるからでしょう。
  幽閉時代の慶喜が一番慕っている人間は、間違いなく直弼です。しかし、慶喜の暗殺を企てる人々をはじめ、彼へ向けられるあらゆる悪意や障害を取り除いてき た直弼は、慶喜を守りたいがあまり、逆に彼を孤独の檻の中に閉じ込めてしまった。慶喜の境遇に心を痛め、誰よりも傍にあろうとした直弼こそが、慶喜を鳥籠 の中に閉じ込めた一人であり、だからこそ直弼は「この孤独に打ち勝つにはどうすればいいのか」という慶喜の声に答えられるはずがなかった。
 この 慶喜の問いは、直弼にとってはある意味非常に残酷な言葉です。慶喜を守る為に、彼を将軍に就け、幕府の天歌泰平による支配を続けるという一貫した行動が、 慶喜を孤独に追いやっている事を、直弼自身は自覚している。けれど、彼は自らの魂と引き換えに邪悪で強大な力を得、慶喜の障害となりうる世の乱れを薙ぎ払 う事は出来ても、自分自身孤独に生きてきた直弼は、彼を孤独から救うという方法が分からない。徳川幕府という堅牢な檻に閉じ込めるという方法でしか、愛し い人を守れない。しかしその代わりに、自らが慶喜の影―…色濃い闇となって、光である慶喜に彼は従者として寄り添おうとした。
 直弼と慶喜は、互いが互いを想っていても、その想いは決して向き合う事はない。自分へ向けられる親愛の眼差しを、直弼は決して受け止められない―…。

 …と、これが自分が「宙ノ翼」という曲に関して抱いていたイメージなのですが、今回の超超絶頂☆雷舞で慶喜役の斎賀さんの歌を直に聴いて、再び感情が爆発してしまいました…。
 今回は直弼役の安元さんが欠席という都合上、斎賀さんはソロVer.で歌われたのですが、その歌声の神々しさは、まさに孤独な少年慶喜そのもの。
 これまで耳に馴染んでいた直弼とのデュエット曲が、雷舞ではソロになった事で、慶喜の孤独感がいっそう強まったような印象を受けました。直弼を失い、一人に置き去りにされてしまった慶喜…そんな光景が目に浮かび、もう目から汁が…。
 直弼という鳥籠から解き放たれて、空を飛んでみても、魂は孤独なまま―…。
 ゆらゆらと客席を埋め尽くす真っ白な光は、慶喜がその絶対的な天歌の力で掌握した日の本の民の姿と重なり、ステージ上では孤独で美しい破壊の神が舞い降りてきたようでした…。
 

 で、これだけであれば「直弼、なんで慶喜様を置いて先に逝ってしもうたんや――!!直弼のアホアホ!」となっていた所ですが、ところがドッコイ、そうはならなかった!


 昼の部も夜の部も、「宙ノ翼」から一曲を挟んで披露されたのが「絶頂SPIRAL」。
  ご存じのとおり、幕末Rockの主人公である坂本龍馬(cv谷山紀章)と慶喜が歌うキャッチーでポップな楽曲。イントロがかかると同時に「ヨッシー!」と いう龍馬役の谷山さんの掛け声で慶喜役の斎賀さんが現れ*1、まるで龍馬に誘われて慶喜が歌い始めるようなシチュエーションか ら曲が始まった…!そして、宙ノ翼からは打って変わった、楽しげな慶喜の歌声…!
 高貴な白の装束を腕まくりして、髪を乱しながら、溌剌と笑顔で龍馬と歌う慶喜が、そこにはいました。直弼を失って自らの強大な力を制御できなくなり、孤独に空を彷徨っていた慶喜…けれど、彼はいま龍馬という仲間を得て、成長していた―…!
 その瞬間、私にとって(おそらく他の多くの観客にとっても)、この雷舞はただ生で演奏される曲を体験するだけの場ではなくなった。「宙ノ翼」で徳川慶喜という少年のどん底の孤独を描き、その後の「絶頂SPIRAL」で、彼がそれを乗り越えた事を示した、見事な演出。

   特に夜の部では、慶喜の「宙ノ翼」と「絶頂SPIRAL」の間に演奏されたのが、龍馬の「LAST SCREAM」だったいう事が、非常に大きな意味を与えてくれています。「LAST SCREAM」は原作ゲームにおいて、龍馬にとっての音楽とは何かという事を、高らかに宣言する曲。故郷の孤独な日々に倦み、ただ楽しく歌うために京へ上 がって来た龍馬は、超魂團の仲間と出会い、音楽が人を救えるという事…『音楽の力』に目覚める。そして、音楽で世の中が変えられる事を知った龍馬は、それ を成す事が自分の存在理由(レゾンデートル)であるという、ステートメントを表明するのです。

 夜の部で、慶喜の「宙ノ翼」→龍馬の「LAST SCREAM」→二人で歌う「絶頂SPIRAL」という曲順で披露された事で、龍馬の力によって慶喜が孤独を乗り越えたことを、観客達に見せたのは、まったく見事な構成でした。


 超超絶頂☆雷舞は、単なるライブパフォーマンスという枠を超え、慶喜という一人の少年の魂の救済を、私の前で見せてくれました。孤独の深淵から立ち上がる少年の成長を、しっかりと表現してくれたのです。
 

 よかった…本当に良かったね、慶喜様…!

 ありがとう幕末Rock、ありがとう超超絶頂☆雷舞…!ほんとうに素敵でした…!

 

 

 

 

おまけ:「大人になった僕だけ見て欲しい」のは、やっぱり直弼への言葉なのかなあ…。

 

*1:たぶん夜の部でしたっけ