■新作(★はおすすめ度)
・「破門」
★★★★⭐
ヤクザ映画バディもの。質の高いエンタメ作品。自分のようなやおい者におすすめ。
・「マグニフィセント7」
★★★★★
監督のデンゼル・ワシントンへの思いの強さが伝わった。東西南北のイケおじを集めました感。みんなキャラが立ってて腰がエロい。やおい者におすすめ。
全体的に最高に面白いエンタメ作品だったけど、女性の描き方がいまいちまだ現代的にアップデートできていない点は気になった。
・「愚行録」
★★★★⭐
とにかく登場人物がほぼ嫌なやつしか出てこない。惨殺された感じのいい夫婦と評判の二人について主人公が調べていくうち、女癖が悪く野心的な夫の過去や、向上心が強く他人を踏み台にしてきた妻の学生時代などが浮かび上がり、主人公と妹も虐待を受けていた子供時代が明かになっていく…。
元々の原作も緻密な構成のミステリーと聞いてたけど、それを上手く映画として再構成したなという印象。主演二人の怪演など、役者陣の演技も良い。ただし過去話の、特に学生時代のシーンが多く、それを現在と同じ役者が演じてるので、学生にしては年取ってない?っていう違和感は正直あり…。
ただその辺の作りの粗さを考慮しても、傑作イヤミス映画と呼んで申し分無い面白さ。ポーランド国立映画大学出身の石井慶監督はこれが長編初作品らしいけど、そうとは思えないほど、カメラの動線のシーンの繋ぎの巧さ、印象的なショットやローアングル、音楽の効果…映画として非常に丁寧な作りだった。
ミステリーが好きな人、イヤな気分に落ちたい人には、自信を持ってお薦めできる映画でした。
・「ネオンデーモン」
★★☆☆☆
エル・ファニングの美しさにみんなが狂っていく映画。ヘルタースケルター的。題材はいいのに……。
・「虐殺器官」
★★★☆☆
別Postで書いた通り。原作読んでいったら混乱した。
・「ザ・コンサルタント」
★★★★☆
いわゆるアンチ・ヒーロー物ドラマ。主人公が自閉症っていうのが、凄く新しく感じた。発達障害者がヒーローにってのは珍しいし新しい。アクションも素晴らしかったけど、すごく知的なドラマだった。企業会計の不正を描くので、簿記二級位の知識が無いと、何が起こってるのか分かりにくそう。
繋がりたいのに他人と繋がれない、そんな主人公の苦しみが心を打った。
・「たかが世界の終わり」
★★★☆☆
主人公ルイは自分の死期が近い事を伝えるため12年ぶりに実家に帰郷する。だが久しぶりに顔を合わせた家族は噛み合わず、会話が互いを傷つけ合うことに…。
大仰な性格の母、威圧的な兄、怯えるその妻、ナイーブな妹…主人公を迎える家族は最初ぎこちなく歓迎するが、主人公の12年の別離は家族にとって長すぎ、徐々に家族団欒の雰囲気は不穏になっていき、不協和音を立て家族同士で傷つけ合う。そんな中主人公は自分の死期について言い出す機会を失っていく。
とにかく俳優陣が豪華で、主人公はギャスパー・ウリエル、兄役にヴァンサン・カッセル、兄の妻役にマリオン・コティヤール、妹役にレア・セドゥというフランス映画界のトップ俳優ばかりの顔ぶれ。そんな名優達が不協和音を立てる家族を演じ、自らの感情をぶつけ合う様が壮絶だった…。
この映画にはいわゆる「大きな物語」がなくて、ひたすら家族の会話劇的なシーンが続くんだけど、言葉は必ずしもそのキャラクターの本心を伝えない。それだけにこのキャラクターは本当は何を恐れ怒り戸惑っているのか、感覚を鋭敏にして観なければならない、緊張感のある映画だった…。
カメラワークやカット、音楽の使い方や照明、映画としての各要素のレベルはかなり高いんだけど、原作がもともと会話劇だからか、全体的に芝居が大仰で、しかもみんなフランス映画界のトップ俳優ばかりだから、それぞれの存在感がありすぎる気がした。原作の舞台版はどうなのか、観てみたくなった…。
・「LA LA LAND」
★★★★⭐
夢を追いかける愚かな大人である主人公二人を描き、現実に何度も打ちのめされても、互いの情熱や芸術に惹かれあい、すれ違い、それでも夢を諦めない。素敵で、切ない映画だった。愛と夢と喪失のドラマ。最初の高速道路のミュージカルシーンは「ロシュフォールの恋人たち」を思わせるカラフルでドキドキするオープニングで、最高。
最初エマ・ストーンの可憐だけど覚束無い歌唱力に不安になりながら観ていたら、後半いい意味で裏切られた。
制作者のミュージカル映画に対する愛、ハリウッド映画に対する強い想いを感じた。ミュージカルが好きな人、ハリウッド映画が好きな人、芸術に救われた事がある人、そして夢を諦められない愚かな大人に、ぜひ観て欲しい作品。
アカデミー賞七部門受賞おめでとうございます。